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【登録販売者試験対策】小児の疳を適応症とする漢方薬のまとめ

「疳(かん)の虫」とは、小さな子供が夜泣きをしたり、癇癪を起こす原因を揶揄して言うような言葉です。もちろん医学的な用語ではなく、病気ではないのですが、昔からその症状を緩和させる漢方製剤などが用いられてきました。今回は登録販売者試験「第3章 主な医薬品とその作用」にも含まれる小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)についてまとめます。

小児の疳とは

身体的には特に問題はないものの、夜泣きや癇癪がひどい子供に対して「疳の虫が騒ぐ」というような言い方を昔からよくします。

これは、体の中にいる「疳の虫」が悪さをして夜泣きや癇癪を起していると昔は考えられていたからです。昔は「虫封じ」として小児針が治療としてよく用いられていました。

これらの状態は大体生後6~8か月に最も多くみられるとされ、これは「人見知り」を始める時期と一致します。

見知らぬ人を怖がったり、お母さんやお父さんなどの信頼している人が目の前からいなくなって、不安を感じたりし始めることも影響していると言われています。

現代において、小児の疳に対して用いられる医薬品としては、小児鎮静薬と言われる生薬製剤・漢方処方製剤があります。

小児の「疳」には「乾」という意味もあると言われており、痩せて血が少ないことが原因であると考えられています。

そのため、小児鎮静薬には鎮静作用のほか、血液の循環を促す作用があるとされる生薬成分を中心に配合されています。また、小児における虚弱体質、消化不良などの改善も期待できます。

小児の疳に対する代表的な配合生薬

ジャコウ

ジャコウ(麝香)は、高地に生息するシカ科のジャコウジカの雄の分泌物を乾燥させたものです。

高級な香料の原料としても有名です。含まれる胆汁質タンパク質などの成分が、興奮、強心などの作用を示すと考えられています。

強心作用のほか、神経などの循環を良くすることで呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高めたり、意識をはっきりさせる等の作用があるとされています。

ゴオウ

ゴオウ(牛黄)はウシ科ウシの胆嚢中に生じた結石(いわゆる胆石)のことです。

古くから「高貴薬」(漢方製剤のなかでも高価、貴重なもの)と言われてきました。強心作用のほか、末梢血管の拡張による血圧降下、興奮を静める等の作用があるとされています。

レイヨウカク

レイヨウカク(羚羊角)は、主に中央アジア、中国、モンゴルに生息するサイガカモシカやガゼラカモシカ(サイカレイヨウとも呼ばれます)の角を乾燥させたものです。

緊張や興奮を鎮める作用があると言われています。ちなみに、サイガカモシカはジャコウジカと同様、乱獲により絶滅の危機に瀕しており、ワシントン条約により商取引が規制されています。

ジンコウ

ジンコウ(沈香)は、ジンチョウゲ科のジンコウなどの材中の黒色の樹脂が沈着したものです。

香道で用いられる香木の一つでもあります。鎮静、健胃、強壮などの作用が期待されます。

小児の疳に適応をもつ代表的な漢方製剤

小建中湯(ショウケンチュウトウ)

配合生薬:芍薬(シャクヤク)、 桂皮(ケイヒ)、 大棗(タイソウ)、 甘草(カンゾウ)、 生姜(ショウキョウ)、膠飴(コウイ)

疲れやすい、胃腸が弱い、かぜをひきやすいといった虚弱体質の改善に用いられます。中でも子どもの虚弱体質や夜尿症、夜泣きの改善を期待して用いられることが多いです。

抑肝散(ヨクカンサン)

配合生薬:当帰(トウキ)、 釣藤鈎(チョウトウコウ)、川芎(センキュウ)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)

「肝」の高ぶりは、イライラや怒りを起こすと言われています。

抑肝散はその字のとおり、「肝」を抑えることから名付けられた漢方です。子どもの夜泣き、疳の虫に用いられるほか、大人の神経症状にも使われています。

柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

配合生薬:柴胡(サイコ)、 半夏(ハンゲ)、 桂皮(ケイヒ)、 茯苓(ブクリョウ)、 黄芩(オウゴン)、 大棗(タイソウ)、 人参(ニンジン)、 牡蛎(ボレイ)、 竜骨(リュウコツ)、 生姜(ショウキョウ)

神経質で、抑うつ、不安、イライラ、不眠などがあるような、精神的に不安定な人に用いられます。

夜泣きや癇癪などの疳の虫と呼ばれる症状は、一般的には成長に伴って自然に治まるものです。しかし、その症状がひどい場合は、それに対処するお母さんやお父さんの生活にも影響を及ぼします。もちろん、お母さんやお父さんの安眠を図ることを優先して漢方製剤を用いることは避けるべきですが、かかりつけの医師に相談したりして、上手く漢方製剤を用いるとよいでしょう。また、古くから伝統的に用いられている漢方製剤は「作用が穏やかで小さな子供に使っても副作用が無い」などといった安易な考えで使用されることも多いです。登録販売者として適切に医薬品を使用してもらうよう、積極的な情報提供も必要です。

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