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【理解を深めよう】「次の人は使用(服用)しないこと」と注意がある医薬品における副作用の作用機序を確認しよう!
医薬品の副作用とその作用機序とは?
今回は、以下の医薬品に注目していこうと思います。
- プソイドエフェドリン塩酸塩
- インドメタシン
プソイドエフェドリン塩酸塩
この有効成分が含まれている医薬品の添付文書を読んだことがあるでしょうか。添付文書の「してはいけないこと」の欄には、「前立腺肥大による排尿困難の症状がある人」と書かれています。前立腺肥大による排尿困難の症状がある人はプソイドエフェドリン塩酸塩を使用(服用)できません。
これは何故なのかを見ていきましょう。
まず、プソイドエフェドリン塩酸塩は交感神経刺激作用を持つ成分です。この作用により、多くの鼻炎薬に鼻づまり改善効果を期待して配合されています。作用機序としては、α受容体(非選択性)を刺激し、鼻粘膜の血管平滑筋を収縮させ、血流を減少させることにより、鼻粘膜の充血や腫脹を軽減し、強い鼻閉改善効果を示します。
では、なぜ前立腺肥大による排尿困難の症状が ある人には使用できないのでしょうか。前立腺内の平滑筋内部には「α1受容体」というものが存在し、これを刺激すると前立腺内の平滑筋が緊張し、尿道を圧迫します(逆にα1受容体遮断薬は前立腺肥大症の治療薬として使用されています)。
つまり、様々なα受容体を刺激してしまうプソイドエフェドリン塩酸塩は、前立腺平滑筋のα1受容体も刺激してしまう為、前立腺肥大症の方はさらに尿が出にくくなってしまう(尿閉が悪化する)ことになるのです。
以上のことより、プソイドエフェドリン塩酸塩を含む医薬品の添付文書には「してはいけないこと」の欄に「前立腺肥大による排尿困難の症状がある人」を意味する文言が書かれています。
インドメタシン
この有効成分が含まれている医薬品の添付文書を読んだことがあるでしょうか。添付文書の「してはいけないこと」の欄には、「ぜんそくを起こしたことがある人」という記載があります。ぜんそくを起こしたことがある人はインドメタシンを使用(服用)できません。
これは何故なのかを見ていきましょう。
まず、インドメタシンは消炎鎮痛作用を持つ成分であり、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)に分類されます。作用機序としては、炎症のケミカルメディエーターであるプロスタグランジンの生合成を阻害することによって抗炎症作用を現すことです。
プロスタグランジンは炎症反応や痛みに関連している物質です。このプロスタグランジンは細胞膜の構成脂質であるアラキドン酸から生合成されますが、この時に必要な酵素はシクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれます。そして、インドメタシンを含むNSAIDsは、このCOXを阻害することにより、プロスタグランジンの生合成を阻害します。
ここで注目したいのは、細胞膜の構成脂質であるアラキドン酸からはプロスタグランジンだけではなく、ロイコトリエンという物質も作られるということです。そして、ロイコトリエンの産生にはCOXは必要ありません。
つまり、インドメタシンを含むNSAIDsでCOXを阻害すると、プロスタグランジンの産生が減り、ロイコトリエンが代償的に増える形になります。簡単にいうと、このロイコトリエンが過剰に増えると喘息を誘発してしまう形になるのです(逆に喘息の治療薬として、ロイコトリエン受容体拮抗薬も使用されています)。
以上のことより、インドメタシンを含むNSAIDsを含む医薬品の添付文書には「してはいけないこと」の欄に「ぜんそくを起こしたことがある人」を意味する文言が書かれています。
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