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知っておきたい薬剤知識 ~貧血治療薬編~

貧血はとても身近な疾患の一つです。自覚症状がなくても外食ばかりでバランスの悪い食事が続いていたり、極端なダイエットなどで知らないうちに体の中の栄養素が偏り、貧血状態になってしまっていることも…。このような隠れ貧血状態の人は特に若年~中高年の女性に多いと言われています。そんな身近な疾患である貧血の中でも、国内で最も患者数の多い鉄欠乏性貧血の治療について説明します。

鉄欠乏性貧血の治療

貧血は、体の中で酸素を運搬する赤血球の中のヘモグロビン濃度が低下した状態を指します。貧血にも様々な種類がありますが、最も一般的なのはヘモグロビンの材料である鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血です。

慢性的な出血等で常に赤血球が失われる状態が続けば、同時に鉄分も失われることになりますので、鉄欠乏性貧血を起こします。

鉄欠乏性貧血の治療は、主に鉄分の補充(鉄剤の投与)が行われます。(もちろん鉄欠乏を引き起こす根本的な原因を調査し、その治療も併せて行われます。)

鉄剤を服用したからといって、体の中で足りない鉄分をすぐに補充することはできません。数ヶ月間、継続した服用が重要です。

主な製品名(一般名)

フェロミア(クエン酸第一鉄)、フェルム(フマル酸第一鉄)、インクレミン(ピロリン酸第二鉄)

知っておきたい鉄剤の副作用

昔から鉄剤は比較的副作用が少ないといわれていますが、起こりうる副作用として有名なのが吐き気や胃痛、下痢などの胃腸障害です。

特に空腹時に服用すると、鉄分が胃の粘膜等を直接刺激して胃腸障害が起こりやすくなりますので、指定された服用タイミングを遵守する必要があります。

また、鉄剤を服用していると便が黒色(緑黒色)っぽく変色することがあります。これは体内で吸収されなかった鉄分が酸化されて便に混じって排泄されることが原因なので、特に悪影響を及ぼすようなことではありません。(鉄は酸化すると黒色~緑黒色に変色します。)

しかしこれを知らないままでは、服用した患者さんは何か体調に問題があるのかも?と不安に感じてしまう恐れがありますので、きちんと説明しておくことが重要です。

ビタミンCと一緒に飲むと吸収率アップ!?

薬の飲み合わせの例として、何かと同時に飲むと効果がなくなる…といった悪い面がよく注目されますが、実は良い面も存在します。

鉄剤に関しては、ビタミンCを多く含むものと同時に摂取すると、体内での鉄分吸収率がアップするのです。

そもそも鉄分は2価鉄、3価鉄と言われる2種類の形で存在しています。一般的に吸収されやすいのは2価鉄の状態です。ビタミンCには還元作用があるため、ビタミンCが豊富な緑黄色野菜などと同時に摂取することで吸収されにくい3価鉄が2価鉄へと変化し、より鉄分が吸収されやすくなることがわかっています。

また、ビタミンCに限らず酸味の強い柑橘類を同時に摂取したり、香辛料などによる胃酸分泌上昇でも鉄分の吸収率はアップします。(ざっくり言うと、胃内のpHが酸性に傾くことで鉄分の吸収率はアップします。)

鉄剤と同時にお茶を飲んではいけないという話を聞いたことはありませんか? これは、鉄がお茶やコーヒーに含まれるタンニンと結合して吸収されにくくなると言われているのが理由です。

しかし、現在使用される鉄剤には十分な量の鉄が含まれているうえに、タンニンとの結合力が弱くなっているために影響はほとんどありません。安心してください。

市販サプリメント服用時の注意点

患者さんの中には、少し貧血気味かな?と感じて、ドラッグストア等で取り扱っている鉄剤のサプリメントを服用する方もいらっしゃるかと思います。

鉄剤のサプリメントを服用する際にも、胃腸障害が起きないように食後に服用する、ビタミンCを含む食品を同時に摂取することで鉄の吸収率がアップするといった医療用医薬品の鉄剤と同様の留意点が挙げられます。

貧血気味だと感じた場合は、併せて食事からも鉄分を摂取することを意識しましょう。ほうれん草やレバーなど、鉄分を多く含む食事を普段から行うことも重要です。

また、医療機関で他に薬を処方されている場合は、鉄剤のサプリメント服用により処方されている薬の効果を弱めてしまうものがあります。(特に一部の抗生物質では、鉄剤との併用による薬効低下が認められています。)

サプリメントといえど、医薬品との併用には注意が必要な場合がありますので、必要に応じてかかりつけの医師に相談するよう案内するとよいでしょう。

鉄剤に限らず、毎日の食事だけでは不足しがちな栄養素を手軽に摂取できるサプリメントはとても有能です。しかし、漫然と服用し続けることはリスクが伴います。鉄剤の場合、貧血症状に改善が見られない場合はそもそも貧血の原因が鉄欠乏ではないことも考えられ、別の疾患が潜んでいる可能性もあります。このように様々な視点から疾患や薬のことを考えられる登録販売者は、当然患者さんからの信頼も厚くなります。未来の自分のためにも、しっかりと知識を定着させていきましょう。

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