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知っておきたい薬剤知識 ~緑内障治療薬編~
緑内障の治療法
そもそも緑内障とは、眼圧の上昇に伴って視神経が障害を受けることで、視野が狭くなったり、視力が低下したりする疾患です。
その治療法は薬物療法、レーザー治療や手術が一般的で、いずれも眼圧を低くコントロールすることを目的としています。
薬物療法では点眼薬の使用が多く、眼圧を下げる点眼薬には房水の産生を押さえるものと、房水の流出を促すものがあります。
房水の産生抑制:β遮断薬
眼にあるアドレナリン受容体の一つ、β受容体は房水の産生に大きく関与しています。この受容体が刺激を受けることで、房水がたくさん産生されるのです。
そのため、この受容体の刺激を遮断することで、房水の産生を抑制し、眼圧低下が期待できます。
主な製品名(一般名)
ミケラン(カルテオロール)、チモプトール・リズモン(チモロール)、ベトプティック(ベタキソロール)など
知っておきたいポイント
アドレナリン受容体は全身に発現しているため、点眼薬であっても全身的な副作用を起こす可能性があります。
また薬は長期に使用するほど、副作用のリスクが高まるとも言われています。β遮断薬の副作用としては、狭心症、不整脈、喘息などを悪化させることが良く知られていますが、それ以外に疲労感や不眠などもまれに見られていますので、これらの症状には注意が必要です。
房水の流出促進:プロスタグランジン類薬
プロスタグランジン類は体内の代謝産物の一つとして様々な働きをしています。その中で、房水の流出を促進させる働きがあります。排出されずに溜まりがちな房水を減らしてあげることで、眼圧上昇を抑制するのです。
主な製品名(一般名)
キサラタン(ラタノプロスト)、トラバタンズ(トラボプロスト)、ルミガン(ビマトプロスト)、タプロス(タフルプロスト)、レスキュラ(イソプロピルウノプロストン)など
知っておきたいポイント
眼や眼の周りなど局所への副作用が知られています。色素沈着、多毛、充血、角膜障害などが起こる場合があるため、点眼後に洗顔をする、眼の周りをふき取る等の対応が必要です。
副作用「多毛」としてよく現れるのが「まつ毛が伸びる」こと。実はこの副作用を逆手にとって、まつ毛美容液の成分として流通したこともありますが、本来の医療目的以外で薬を使用することは決して勧められたものではありません。
その他:ビタミンB製剤
ビタミンBは水溶性(水に溶けやすい性質を持つ)ビタミンで、B1・B2・ナイアシン・パントテン酸・B6・B12・ビオチン・葉酸などの種類があります。
その中でもビタミンB2は新陳代謝などを正常に保ち、目の炎症(角膜炎など)を改善することが期待されています。
また、ビタミンB12は末梢神経の修復作用などにより、眼精疲労などを改善することが期待され、緑内障治療としてその他の点眼薬と併用して用いられることがあります。
主な製品名(一般名)
フラビタミン・FAD(ビタミンB2)、サンコバ(ビタミン12)など
知っておきたいポイント
特に注意すべき副作用は見られていませんが、ごく稀に刺激感などが現れる場合があります。
緑内障患者と一般薬
胃腸薬や風邪薬といった市販薬の中には、添付文書に「緑内障の方は使用しないでください。」といった注意書きが記載されているものがあります。これは市販薬の「抗コリン作用」による眼圧上昇のリスクを防ぐ目的があります。
風邪薬に含まれるジフェンヒドラミンやマレイン酸フェニラミン、鎮痙薬に含まれるブチルスコポラミンなどは抗コリン作用を持っており、緑内障のタイプによっては急激な眼圧上昇による眼痛、頭痛、吐き気などといった緑内障発作を引き起こす可能性があります(緑内障の方、すべての人に起こるわけではありません)。
特に閉塞隅角緑内障の人は、上記の緑内障発作を起こすリスクが高いと言われています。もし発作が起きた場合に対処が遅いと失明に繋がる可能性もあるため、さらなる注意が必要です。
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