登録販売者、採用の現場から
- ホーム
- 登録販売者、採用の現場から
- 知っておきたい薬剤知識 ~双極性障害(躁うつ病)治療薬~
知っておきたい薬剤知識 ~双極性障害(躁うつ病)治療薬~
双極性障害(躁うつ病)の治療
双極性障害の治療の中心は薬物療法で、躁状態とうつ状態の気分の波を小さくする効果がある気分安定薬や、躁症状・うつ症状そのものの改善を期待して使用する抗精神病薬があります。
しかし、気分安定薬はあまり即効性が期待できません。そのため、気分安定薬と抗精神病薬を併用して、躁症状・うつ症状を落ち着かせながら、患者さんに最適な薬の種類や量を調整します。
双極性障害の治療薬には、その他症状によっては抗うつ薬や睡眠薬などを用いることがあります。複数の種類の薬を併用して治療を行うことが多いため、それぞれの薬の相互作用や副作用の発現には注意が必要です。
双極性障害の治療薬:気分安定薬
主な製品名(一般名)
リーマス(炭酸リチウム)、テグレトール(カルバマゼピン)、デパケン・セレニカR(バルプロ酸ナトリウム)
気分安定薬はそれぞれ、薬の特徴があります。気分安定薬の代表格である炭酸リチウムは主に躁症状に効くとされ、明確な作用機序は解明されていないものの、複合的に中枢神経に作用するとされています。
躁病だけではなく、抗うつ薬と併用することで抗うつ薬の効果を高める作用もあるため、うつ病の治療にも使用することがあります。
炭酸リチウムは副作用として、飲み始めの頃に手の震え、下痢、吐き気などがあることが多いですが、1週間程度で徐々に治まってきます。また、炭酸リチウムは効果が現れるまで時間がかかると言われており、急性期の治療には使いにくいといった特徴もあります。
カルバマゼピンは脳内で起きている神経細胞の異常な興奮を抑える作用があり、躁症状の改善を期待して使用されます。バルプロ酸ナトリウムは、脳内でGABAという神経伝達物質の作用を促進することで、脳内の神経興奮を抑える作用があります。
そのため、躁症状の改善を期待して、使用されます。カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムともにてんかんの治療薬としても使用されています。
双極性障害の治療薬:抗精神病薬(非定型抗精神病薬【SDA:セロトニン・ドパミン遮断薬】)
主な製品名(一般名)
ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン)、ラツーダ(ルラシドン)
脳内のドパミンD2受容体およびセロトニン5-HT2受容体に対して抑制作用を示す薬で、統合失調症の治療薬として知られていますが、双極性障害の治療にも用いられます。
オランザピンは躁症状・うつ症状のどちらにも効果を示し、クエチアピン、ルラシドンは主にうつ症状に効果を示します。気分安定薬よりも効果を示すのが早く、特にオランザピンは3〜4週間の治療で5〜6割の方で症状の改善が認められるとの報告もあります。
オランザピン、クエチアピンともに重大な副作用があります。食欲が増加したり、太りやすくなるため、高血糖に注意が必要です。そのため、糖尿病患者には使用禁忌となっています。
双極性障害の治療薬:その他(ラモトリギン)
主な製品名(一般名)
ラミクタール(ラモトリギン)
脳内で興奮性神経伝達物質の放出を抑えることで、神経の過剰な興奮を抑える作用を示します。それにより、双極性障害の主にうつ症状の改善が期待されます。
また、気分安定薬として分類されることもあります。他にも抗けいれん作用を示すため、てんかんの治療などにも用いられます。
ラモトリギンは、日本において双極性障害の再発予防効果(双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制)について、初めて承認・適応を取得した薬です。
副作用が全般的に少ないとも言われていますが、発疹や目の充血がみられる場合はすぐに服用を中止しなければいけません。スティーブンス・ジョンソン症候群という重篤な皮膚障害の副作用が報告されています。
双極性障害の治療薬:その他(アリピプラゾール)
主な製品名(一般名)
エビリファイ(アリピプラゾール)
非定型抗精神病薬(ドパミンD2受容体部分作動薬)と分類される薬の一つです。双極性障害では主に躁症状の改善が期待できます。統合失調症やうつ病、小児の自閉スペクトラム症の治療薬としても用いることがあります。
関連記事
-
登録販売者、採用の現場から
知っておきたい薬剤知識 ~統合失調症の治療薬~
統合失調症の治療薬 これまでの研究から、統合失調症の陽性症状(妄想や幻覚)には、脳内で神経伝達物質の一つであるドパミンの拮抗作用をもつ薬の効果が高いことが分かっており、脳内のドパミンが過剰な状態であることが原因ではないか […]
-
登録販売者、採用の現場から
知っておきたい疾患知識 ~双極性障害(躁うつ病)~
双極性障害(躁うつ病)とは 双極性障害は「躁うつ病」とも呼ばれるとおり、ハイテンションで活動的な「躁状態」と、抑うつ気味で無気力な「うつ状態」という気分の波を繰り返します。 うつ病と混同されやすいのですが、うつ病は「うつ […]
-
登録販売者になりたい人へ
知っておきたい薬剤知識 ~脂質異常症治療薬編~
脂質異常症の薬物治療 血中のコレステロール値や中性脂肪値が異常値を示している状態である脂質異常症の治療法は、最初から薬を用いるわけではありません。 一般的に、最初に取り掛かるのは食事療法と運動療法を用いた生活習慣の改善で […]
-
登録販売者、採用の現場から
知っておきたい薬剤知識 ~糖尿病治療薬編~
糖尿病治療薬の作用による分類 糖尿病(以降、ここでは2型糖尿病のことを指します)は血糖値を下げるホルモン、インスリンの作用が大きく影響しています。 インスリンの分泌が不足していたり(インスリン分泌能低下)、インスリンは十 […]
-
登録販売者、採用の現場から
知っておきたい薬剤知識 ~降圧薬編~
種類1:カルシウム拮抗薬(Ca2+チャネル遮断薬) 血管の収縮にはカルシウムイオンが関与しています。血管を構成する細胞においてカルシウムイオンの流入を抑えることにより、血管を拡張させます。 全身の末梢血管を拡張させること […]
-
登録販売者、採用の現場から
知っておきたい薬剤知識 ~甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)の治療薬~
バセドウ病・橋本病の薬物療法 バセドウ病の薬物療法の中心は、甲状腺ホルモンの合成を抑制する抗甲状腺薬です。ホルモン量のバランスに影響するため、規則的に服用する必要があります。症状の程度によって薬の量を調整しつつ、数年単位 […]