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知っておきたい薬剤知識 ~脂質異常症治療薬編~

登録販売者試験では出題されない医療用医薬品ですが、身近な疾患の治療薬は知っておきたいところです。今回は脂質異常症治療薬についてポイントを絞って説明します。脂質異常症治療薬は継続して飲み続けることが多い薬ですので、その特徴をしっかり覚えていきましょう。

脂質異常症の薬物治療

血中のコレステロール値や中性脂肪値が異常値を示している状態である脂質異常症の治療法は、最初から薬を用いるわけではありません。

一般的に、最初に取り掛かるのは食事療法と運動療法を用いた生活習慣の改善です。

薬物治療の大前提として、薬を飲めば生活習慣の改善が不要になるわけではありません。あくまでも薬物治療は、食事療法や運動療法だけではコレステロール値や中性脂肪値のコントロールが上手くいかない場合に、補助的に用いられるものなのです。

そのため、薬物治療の結果としてコレステロール値が安定してきても勝手に薬の服用をやめてはいけません。どんな疾患であっても、基本的には医師から薬が処方されている限り、きちんと服用するのが大切です。

脂質異常症治療薬は大きく3つに分類できます。それぞれの薬の特徴を確認していきましょう。

  • LDLコレステロール値を下げる薬
  • LDLコレステロール値と中性脂肪値を下げる薬
  • 中性脂肪値を下げる薬

LDLコレステロール値を下げる: HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬)

肝臓においてコレステロールの合成を抑制する薬です。肝臓内のコレステロールが少なくなると、代わりに血中からコレステロールを取り込もうとする働きが増加するため、血中LDLコレステロール値が低下します。

主な製品名(一般名)

クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、メバロン(プラバスタチン)など

知っておきたいポイント

最も一般的な脂質異常症治療薬で、薬物治療を始めて最初に処方されることも多い薬です。スタチン系薬で最も有名な副作用は横紋筋融解症。筋肉組織が融解・破壊されてしまう病気です。

初期症状は四肢の筋肉痛やしびれ、脱力感が見られます。尿が赤褐色に変化することもあります。

LDLコレステロール値を下げる:陰イオン交換樹脂製剤

腸内で胆汁酸と結合し、便として排泄させる薬です。そもそも胆汁酸はコレステロールを原料にして生成されるため、体内で胆汁酸の排泄が増加すると胆汁酸が不足していきます。

その不足したコレステロールを補うために血中からのコレステロール取り込みが増加するため、LDLコレステロール値を低下させるのです。

主な製品名(一般名)

コレバイン(コレスチミド)、クエストラン(コレスチラミン)

知っておきたいポイント

陰イオン交換樹脂製剤は水に溶けると強い塩基性を示し、酸性のものと結合する性質を持っています。この性質を利用して胆汁酸と結合するのですが、胆汁酸でなくても酸性を示す薬(ワルファリン、プラバスタチンなど)とも結合してしまいます。

陰イオン交換樹脂製剤と同時に服用すると、酸性を示す薬の吸収量が低下して効果が発揮できない場合もあるため、薬の飲み合わせには注意が必要です。

LDLコレステロール値と中性脂肪値を下げる薬:ニコチン酸誘導体製剤

肝臓おいて中性脂肪及びコレステロールの合成を抑制します。血中LDLコレステロール値と中性脂肪値は低下させ、HDLコレステロール値は上昇させる作用もあります。

ニコチン酸はビタミンB群の一種であることから、長期間の服用であっても比較的安心感のある薬です。

主な製品名

ユベラN(トコフェロールニコチン酸エステル)、コレキサミン(ニコモール)など

知っておきたいポイント

血管拡張作用もあるため、顔が赤くなったり、ほてりを感じる副作用が現れることがあります。

中性脂肪値を下げる薬:フィブラート系製剤

フィブラート系製剤は、血液中の中性脂肪の分解を促進、また肝臓での中性脂肪の合成を抑制します。

主な製品名

ベザトール(ベザフィブラート)、リピディル(フェノフィブラート)など

知っておきたいポイント

スタチン系薬と同様、主な副作用として横紋筋融解症があります。そのため、スタチン系薬と併用する場合は横紋筋融解症発症のリスクが高まるため注意が必要です。

中性脂肪値を下げる薬:EPA製剤

EPA(イコサペント酸)とは、魚の脂に含まれる成分のひとつです。EPAは肝臓で中性脂肪の合成を抑制することに加え、血中の中性脂肪の分解を促進させます。

主な製品名

エパデール(イコサペント酸エチル)、ロトリガ(オメガ−3脂肪酸エチル)など

知っておきたいポイント

EPA製剤は中性脂肪を低下させるだけでなく、血液がかたまりにくくなる作用(抗血小板作用)も持っています。

そのため、動脈硬化が進行することで発症する「閉塞性動脈硬化症」という疾患の治療薬としても用いられることがあります。

脂質異常症患者での一般薬・サプリメント服用で注意しておきたいポイント

コレステロール値を下げると銘打った一般薬やサプリメントもドラッグストアでは多数販売されています。

健康診断などでコレステロール値が気になる値であった患者さんが気軽に手に取れるのはよいですが、医師より脂質異常症治療薬が処方されているのに加えて、一般薬を服用するのは成分の重複等の恐れがあるため、避けなければいけません。

脂質異常症治療薬は一度飲み始めると、ずっと飲み続けていく必要がある薬だと言われることもありますが、きちんと治療してコレステロール値をコントロールできるようになれば、薬も減らしていくことも可能です。医療用医薬品である脂質異常症治療薬は種類もたくさんありますが、サプリメントと同成分でもあるEPA製剤などは比較的親しみを持てるのではないでしょうか。気になる薬を調べていってみましょう。

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