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知っておきたい薬剤知識 ~パーキンソン病治療薬~

脳内のドパミンが減少することで、手足の震えや筋固縮などの特徴的な運動症状がみられるパーキンソン病。高齢者を中心に、日本では1,000人に1~1.5人程度の割合で患者さんが存在するとされています。治療の中心は薬物療法であり、パーキンソン病の治療薬には様々な種類の薬が使用されています。今回はパーキンソン病に用いられる薬をまとめます。

パーキンソン病の薬物治療

パーキンソン病はドパミン神経細胞の減少によるドパミンの減少によって各種症状が現れるため、減少したドパミンを補充する治療が行われます。以下のような種類の薬が使用されます。

  • レボドパ製剤
  • ドパミンアゴニスト(ドパミン作動薬)
  • MAO-B阻害薬
  • COMT阻害薬
  • ドパミン遊離促進薬
  • 抗コリン薬

パーキンソン病の治療薬にはその効果に波があり、パーキンソン病を発症して初めの3~5年は薬の効果が現れやすく、症状が安定しやすいのですが、長期間服用すると徐々に薬の効果が不安定になるといった特徴があります。

具体的には、薬を服用していても効果の切れ目を感じるようになった状態である「ウェアリング・オフ(wearing-off)現象」、薬を服用したタイミングによらずスイッチを入れたり切ったりするように急激に症状が変動する状態である「オン-オフ(on-off)現象」などがあります。このような症状とも付き合いながら、長期間の服薬が必要です。

パーキンソン病の治療薬:レボドパ製剤

主な製品名(一般名)

ドパストン(レボドパ)、メネシット・デュオドーパ(レボドパ・カルビドパ)、スタレボ(レボドパ・カルビドパ・エンタカポン)、マドパー(レボドパ・ベンセラジド)など

パーキンソン病患者にて不足しているドパミンを補充する薬です。レボドパ製剤はドパミンの前駆体であり、脳内でドパミンに変換されてパーキンソン病における手足の震えや筋固縮などを改善させます。

実は、ドパミンそのものを服用しても脳内に移行することはできません。身体の中には、中枢(脳)へ異物が移行することを防ぐ役割を果たす血液脳関門(Blood Brain Barrier)があり、ドパミンも含め多くの薬がこの血液脳関門により脳への移行が妨げられています。

レボドパ製剤は血液脳関門を突破することができるため、ドパミンそのものの代わりにパーキンソン病での薬物治療の中心を担っているのです。

パーキンソン病治療薬は複数の種類を組み合わせて服用することから、他の種類の薬との配合剤もあり、患者さんの服薬コンプライアンス向上を目指しています。

パーキンソン病の治療薬:ドパミンアゴニスト(ドパミン作動薬)

主な製品名(一般名)

カバサール(カベルゴリン)、パーロデル(ブロモクリプチン)、ペルマックス(ペルゴリド)、ビシフロール・ミラペックス(プラミペキソール)、レキップ・ハルロピ(ロピニロール)、ニュープロパッチ(ロチゴチン)など

ドパミンアゴニストはドパミンの代わりにドパミン神経を刺激して、パーキンソン病における手足の震えや筋固縮などを改善させます。ドパミンアゴニストだけではありませんが、脳内でドパミンの働きが過剰になると悪性症候群と呼ばれる症状が現れます。

高熱や意識障害、頻脈、腎不全などの比較的重たい症状であることが多いため、発生頻度はまれではありますが、悪性症候群の可能性を把握し、これらの症状がみられた場合はすぐに医師と連携することが必要です。

パーキンソン病の治療薬:MAO-B阻害薬

主な製品名(一般名)

エフピー(セレギリン)、アジレクト(ラサギリン)、エクフィナ(サフィナミド)

脳内でドパミンはMAO(モノアミン酸化酵素)によって分解されます。MAOにはA型、B型の2つのタイプがあり、脳内にはB型が多く存在するとされています。そのため、MAO-B型の働きを阻害することで、ドパミンの分解を抑制することができます。結果的に脳内でのドパミン量が増え、パーキンソン病の症状の改善が期待できます。

パーキンソン病の治療薬:COMT阻害薬

主な製品名(一般名)

コムタン(エンタカポン)、オンジェンティス(オピカポン)など

パーキンソン病治療薬の中心であるレボドパ製剤は、脳内に移行してドパミンに変換されますが、一部は脳内に移行する前に分解されてしまいます。レボドパを分解する酵素がCOMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)です。

COMT阻害薬は、レボドパを分解するCOMTの働きを阻害することで、レボドパの脳内への移行を高める作用を示します。これにより結果的に脳内でのドパミン量が増え、パーキンソン病の症状の改善が期待できるのです。

パーキンソン病の治療に用いられる代表的な薬をまとめましたが、今回ご紹介したもの以外にもドパミン遊離促進薬(マンタジン)、抗コリン薬(ビペリデン、トリフェキシフェニジルなど)があります。パーキンソン病治療薬を服用している方は、ドラッグストア等で購入できるビタミン剤(特にビタミンB6)との飲み合わせに注意が必要な場合があります。市販薬やサプリメントの販売時も、飲み合わせに問題がないか主治医に確認してもらうよう、患者さんには案内することが重要です。

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