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現場で役立つ季節の健康ネタ

これが、実は結構違うんです~ウィルスと細菌のお話~

昨今大流行のノロもインフルエンザも、原因はウィルスです。9割の風邪や帯状疱疹などウィルス性の疾患ですし、風疹やSARSやAIDSなどもそうです。かたや、下痢、食中毒、結核、ペスト、コレラ、破傷風などは細菌が原因です。それぞれの違い、はっきりとご存知ですか?

ウィルスと細菌の違い

ウィルスと細菌では、なにが違うのでしょうか?同じようなものでしょ?と思いがちですが、これが実は大きく違うのです。ウィルスは、自力で増えることが出来ませんので、増殖するために人や動物の細胞を利用します。生きている細胞にしか取りつかないのです。

細菌は、細胞がなくても増えますので、生物以外のものにも取りつきます。また、医薬品の観点から言うと、ウィルスには抗生物質が効かないですが、細菌には抗生物質が(基本的には)効きます。

お医者さんでもらう抗生物質の役割とは?

さてここで「あれ?」と思われた方はいらっしゃいませんか?「風邪の9割以上がウィルス性ならほとんどのものには抗生物質は効かないということなのに、医者に罹ったらよく抗生物質を処方されるなぁ」そうです。

ウィルス性の風邪には効かないはずの抗生物質を、病院にいくとそこそこの頻度で処方されたりします。ウィルスには、抗生物質は効きません。予防的にも使えません。それなのになぜ抗生物質が処方されるのかというと、「とりあえず」「念のため」「患者が安心するから」という理由が大半なのだそうです。

ただ「風邪のような症状の他の病気」という可能性も捨てきれないということは確かなようで、そのための「とりあえず・念のため」なんですが、それにしても安易な抗生物質の処方には、現在さまざまな警鐘が鳴らされています。

耐性菌の出現

安易な抗生物質の投与は、体内の常在菌をも減らし、免疫力を落としてしまったりします。もっと深刻なのが、耐性菌の出現です。耐性菌とは抗生剤の効かない細菌のことで、必要のない抗生剤の多用、必要な抗生剤を医師の指示に従わず勝手に止めてしまったりすることなどにより出現します。

それもひとつの抗生剤だけでなく、多くの抗生剤に対して耐性を獲得した細菌も出現しており、代表的なものにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)があります。院内感染のニュースなどで、よく名前を聞きますね。過去「最強の抗生物質」と呼ばれたバンコマイシンも、現在「最強の抗生物質」と呼ばれているカルバペネム系抗生物質も効かない感染症というものが、確かに出現してきているのです。

細菌と抗生物質のイタチごっこ

細菌と抗生物質の戦いは、ペニシリンの昔から常にイタチごっこが続いています。より強い細菌が出現すると、それを抑える抗生物質が出現し、より強い抗生物質が出現すると、それの効かない細菌が出現するといった具合です。このイタチごっこはウィルスでも同様で、そのウィルスへの特効薬が発明されると、次にはその特効薬が効かないウィルスが出現してきます。数年前に札幌で見つかった、タミフルとラピアクタが効きにくい耐性インフルエンザ・ウィルスがこれに当たります。

ちなみに、抗生物質の副作用に下痢がありますが、これは抗生剤が腸内の善玉菌まで殺してしまうからです。この場合、原因がはっきりしているので安易にOTCの下痢止めを飲んではいけません。腸内環境を整えるために、乳酸菌などの有用菌を摂るほうがよいようです。その際のポイントは、色々な種類のプロバイオティクスを体に取り入れること。その乳酸菌が合う合わないは個人により異なり、1つの菌だけだと、その人の身体に合っていない場合もあるんだそうですよ。

医薬品と言うものは、身体に大きな影響があり、疾患にも効果的であるがゆえに、処方する側(薦める側)も、飲む側も、しっかりと理解しよく考えた上での「用法用量を守る」姿勢が本当に大事なのですね。

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