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現場で役立つ季節の健康ネタ

行き過ぎた「清潔志向」に待ったがかかるのでしょうか?~薬用石鹸~

2016年9月2日、米食品医薬品局(FDA)が19種類の殺菌剤を含有する石鹸などの販売を禁止すると発表しました。2015年にすでにトリクロサンを含む製品を販売中止となっているヨーロッパに、米食品医薬品局と日本の厚生労働省が足並みをそろえることになります。

殺菌剤を含有する石鹸などの販売が禁止になった理由

  • 通常の石鹸と比べても、優れた殺菌効果があるとはいえない。
  • 効果がないだけでなく、免疫系や環境に悪影響を及ぼす可能性がある。

というのが理由なんですが、なんとも、薬用・殺菌石鹸の存在意義がほとんど否定されているような言い分ですね。

日本でもトリクロサンとトリクロカルバンという殺菌剤は多くの商品に使われていますが、特にトリクロサンには以前から危険性の指摘があり、今回トリクロカルバンにも同様の危険性があるという指摘がありました。

危険性を指摘される原因

危険性を指摘される原因は環境ホルモン作用で、動物実験では肝硬変や肝細胞がんの発症リスクが高まることも判明しているそうです。

この成分、実は石鹸だけでなく、歯磨き粉やマウスウォッシュなど、直接口腔内に含むものにも使用されているので影響が気になりますね。

トリクロサンを含む製品は、すでにヨーロッパでは2015年に販売中止になっています。2016年に、日本でもようやく厚生労働省より通知が出されました。

石鹸だけではない!トリクロカルバンなどが含まれる製品

トリクロサン等を含む薬用石けんの切替えを促します(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000138223.html

厚生労働省の通知は「トリクロサン」「トリクロカルバン」ほか、19種類の抗菌成分を含む商品を販売している製造会社に、これら成分を含まない商品への切り替えを求めるというものです。アメリカのFDAに追従した形ですね。

トリクロカルバンやトリクロサンは、超有名どころの商品にも含まれています。すでに企業によっては成分の切り替えを表明していたり、適宜対応を発表していたりもするのですが、石鹸・ボディソープなどを初め、化粧水、クレンジング、美容液、日焼け止め、歯磨き粉などにも添加されているものがありますので、対応はなかなか大変そうです。

身体を守る為の菌も必要

昨今はテレビのCMを見ていても「不潔」「ばいきん」「臭い」などを必要以上にクローズアップして、とかく清潔志向を煽り立てるものばかりが目立ちます。ですが人間は、腸の中の腸内細菌や皮膚の常在菌などに助けられて健康を維持しているのが実情です。

また、子供は成長していく過程で雑菌などに触れ、少しずつ免疫力を育てていきます。除菌、除菌で身の回りを極端な無菌状態に近づけることは、菌に対する抵抗力を下げてしまうことになりかねません。

現代ではアレルギーやアトピーは「清潔病」という意見もあるほど、必要以上に神経質すぎる除菌・抗菌は、健康にとって逆効果になってしまう可能性も指摘されていますので、もちろん感染症などには注意を払わなければいけませんが、日常生活では適度な対応を心掛けたいところです。

清潔で気持ちの良い生活を送ることはもちろん大切ですが、過敏すぎるほどに薬剤を使っての殺菌・除菌にこだわることがどういう結果に繋がるのか。今回のFDAの決定はその基本の部分を再考する機会になったのではないかと思います。

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