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知っておくべき医療用医薬品の副作用2

2011年、アメリカ・ペンシルバニア大学で行われている疫学調査(KPNC)の中間発表があり「糖尿病治療に用いられるピオグリタゾン塩酸塩(商品名アクトス)には、膀胱がんを発生させる可能性がある」と指摘されました。 また、最近は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の増加に伴い、脂質異常症治療薬の作用による横紋筋融解症の発症が問題視されています。

糖尿病の薬で、膀胱がんになる?

ピオグリタゾンは、インスリンの働きを高める作用があることから、「インスリン抵抗性改善薬」と呼ばれ、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)の患者さんに主に処方されています。

この研究で、「アメリカの2型糖尿病患者で、ピオグリタゾンを飲んでいない患者は1万人あたり年間6.9人が膀胱がんを発症しているのに対し、ピオグリタゾン使用者は同8.2人」とされました。

また、フランス行政当局は、約150万人の糖尿病患者のデータを検討し、「ピオグリタゾン投与患者(約16万人)で、膀胱がんが175例発症。非投与患者(約134万人)は1841例。ピオグリタゾン投与患者の膀胱がん発症率が高い」と報告しました。

ただし、ピオグリタゾンを服用しているすべての患者さんが膀胱がんになるわけではなく、この薬が、膀胱がんの明確な原因として特定されたわけでもありません。
ピオグリタゾンを服用しなくても、一定の頻度で膀胱がんは発症します。

たとえば、日本の2006年の統計で、膀胱がんの罹患率は年間6.9例/10万人。ヨーロッパの同罹患率は年間15.6例、アメリカの年間21.1例と比較すると低率です。日本ではピオグリタゾンに関する疫学研究は行われていませんが、欧米の調査結果をそのまま日本人に当てはめることはできません。

ただし、これらの疫学研究の結果により、わずかであってもピオグリタゾンが膀胱がんを発症させる可能性を高めているのは事実です。厚生労働省もこの薬の使用に対し、注意を促しています。

脂質異常症の薬で、筋肉が溶ける?

「横紋筋融解症」という、奇妙な病気をご存知ですか?

腕、足、心臓などを形成する骨格筋が文字どおり溶けて、筋細胞の成分が血液中に流れ出し、急性腎不全症状(乏尿、浮腫、呼吸困難、高カリウム血症、昏睡など)をはじめとする多くの症状を発症する病気です。

早期治療を行わないと重いダメージを受ける可能性が高まり、最悪のケースでは死に至ります。

横紋筋融解症は事故、負傷、激しい運動などの外傷的要因や、脱水、薬剤の副作用といった非外傷的要因により発生します。

コレステロールを下げる「スタチン系薬剤」や、中性脂肪を下げる「フィブラート系薬剤」が横紋筋融解症を引き起こす可能性が高いということです。とくに、両者を併用すると発症リスクが高まるとされ、原則的にこの2剤は、通常は併用しません。

横紋筋融解症の初期症状は、筋肉痛や脱力感。しだいに筋力減退や体の痺れが出てきます。また、筋肉がこわれると細胞内のミオグロビンという物質が流れ出し、腎臓を通して尿中に排泄されるので、尿が赤褐色となり、血尿と間違われることも少なくありません。

横紋筋融解症はこの段階で発見されるケースがほとんどですが、早期発見・早期治療が重要なことは言うまでもありません。

もし、あなたが糖尿病でピオグリタゾンを服用している患者さんをご存じなら、膀胱がんの発症リスク(生活習慣病、喫煙習慣、家族歴など)を考えて、服薬を続けるかどうか、主治医と相談するようすすめるのもひとつの選択肢です。 もし、脂質異常症の治療薬を服用中の方が、異常な倦怠感などを覚える場合は、すぐに主治医に伝えるように促してください。 薬の副作用について、このような病気を引き起こすことも知ってほしいと思います。

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