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現場で役立つ季節の健康ネタ

副作用が少ないと言われる夢の次世代不眠症治療薬~オレキシン受容体拮抗薬~

金沢大学の櫻井武教授をご存知ですか?食欲や睡眠に関わる「オレキシン」という脳の視床下部で働くペプチドを発見された方です。

オレキシンとはどんな物質?

「脳に関する俗説はでたらめばかり」という櫻井教授は、あるテレビ番組で以下のように話されていました。

  • 右脳型、左脳型というのは関係ない。言語野が左にあることからそのように言われ出しただけだと思う。
  • 脳は一部しか使われておらず、大部分は能力を眠らせたままというのも嘘。ほとんど使っている。
  • 夢は、単に記憶整理・定着の過程で見るノイズだ。

幽霊はいない!ともおっしゃっていましたね(笑)。

「オレキシン」は、最初は食欲を制御する物質だと思われていたそうですが、実はまったく違う方面から、ナルコレプシー(突然気絶するように眠りこんでしまう病気)の方の脳には、オレキシンが極度に不足しているという研究結果が発表され、食欲のみでなく、人間が意識をもって覚醒するために必要な物質なのだということが解ったのだそうです。

つまり、ものすごく単純に考えてみると、お腹が空く⇒眠るな、食べ物を探せ!ということで脳内視床下部にオレキシンが増える⇒意識が覚醒状態におかれる、ということだそうです。

最近でこそ飽食の時代と言われますが、長い歴史の中のほとんどを、飢餓と生きてきたためのシステムなんでしょうね。お腹が空きすぎて眠れない!というのも、このシステムのせいだということです。

オレキシンを利用した睡眠薬

さて、このオレキシン。そうなるとつまり、発現を阻害されて増えないと、覚醒レベルが下がり、眠くなるということです。
これを利用した不眠症治療薬が「スボレキサント」。日本でも2014年に発売開始されました。

一般的な睡眠薬はベンゾジアゼピン系と言われ、次の日にまで作用が続いてしまう「持越し効果」、用法用量を守らない場合の「記憶障害」、「筋弛緩作用」、ごくまれに「奇異反応」などの副作用があると言われていますが、「スボレキサント」は非ベンゾジアゼピン系であり、これらの副作用をより軽減し、自然な睡眠を誘発する睡眠薬として期待されています。

もちろん、自然に眠れることに越したことはないのですが、いつまでも眠れないというのもつらいものです。
深刻な不眠症に悩む方に、選択肢が増えたのはいいことですね。

オレキシンは、先に書きましたように食欲にも関係していますので、不眠症のみならず、中枢性摂食異常症の治療にも役立つ可能性があり、基礎代謝の増加や肥満の治療薬としての可能性もあるとのこと。すごいですね!

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