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乳幼児・高齢者は特別? 薬を服用する際に配慮が必要な理由を考えよう
乳幼児:乳児、幼児、小児の違い
医薬品の使用上の注意においては、「乳児」「幼児」「小児」という単語を意識的に使い分けされています。あくまでも目安ではありますが、年齢区分は以下のとおりです。
- 乳児:1歳未満
- 幼児:7歳未満
- 小児:15歳未満
絶対に15歳になるまで成人と同じ用法用量で使用してはいけない、というルールがあるわけではありません。
14歳の子供でも、大人に負けないくらいの体格にまで成長している子もいるでしょう。個々に合わせた対応が必要になってきますが、乳幼児特有の身体的特徴が医薬品使用リスクにつながることがあります。
小児:身体的特徴による医薬品使用リスク
小児までは薬の成分を吸収したり代謝したりする体の機能が、成人と比べるとまだまだ未発達であることから、医薬品の使用には配慮が必要と言えます。
例えば腸の長さ。小児は大人に比べると体は小さいものの、腸の長さは小児の体の大きさに対しては長いのが特徴です。
そのため、内服薬の場合、薬の吸収率も相対的に高くなってしまうのです(内服薬の薬の成分はほぼ腸管で吸収されます)。
また、脳へ流れる血液が通る「血液脳関門」と言われる部分が体にはあります。血液脳関門は、脳に必要な物質以外の異物が簡単に入らないようにバリアを張っているようなものです。
薬も体にとっては異物ですので、血中に溶け込んだ薬でも血液脳関門が通れずに脳へ移行できないものが多いのです。
小児の場合はこの血液脳関門も未発達であり、比較的簡単に脳へ薬が移行してしまいます。そのため、中枢神経系に影響を与える医薬品では副作用が起こりやすくなります。
小児は肝臓や腎臓の機能も未発達です。薬の代謝・排泄にも時間を要することになるため、薬の作用が強く出すぎたり、副作用がより強く出ることもあります。
小児:医薬品使用の際の留意点
先に述べたような身体的特徴から、薬は年齢に応じた用法用量が定められているのです。安易に成人用の医薬品の量を減らして、小児に与えるなんてもってのほか。登録販売者は医療従事者の一人として、きちんと保護者にも説明しなければいけません。
医薬品によっては、形状等が小児向けに作られていないものもあります。錠剤やカプセル剤は乳児がそのまま飲むことは難しいですし、幼児であって飲み込む際に喉に引っ掛かりやすいので、製品によっては添付文書に注意が記載されています。
乳児や小児向けの用法用量が定められている医薬品についても、乳幼児は一般的に状態が急変しやすいことが考えられるため、一般用医薬品による対処は最小限にとどめることが望ましいとされています。登録販売者としても、医療機関への受診勧告をきちんと行うことが重要です。
高齢者:身体的特徴による医薬品使用リスク
高齢者は、一般的に生理機能が衰えつつあるものです。医薬品の使用上の注意においては、65歳以上を高齢者として定めています。
肝臓や腎臓の機能低下に伴って薬の作用が強く出すぎたり、副作用がより強く出ることが考えられます。
ただし、その生理機能の低下の度合いは個人差が大きく、年齢から一概に薬に対する影響度を計ることは難しいと考えられます。そのため、個々の状況に応じた対応が必要となってきます。
また、高齢者は生理機能だけでなく筋肉の衰えも見られます。特に喉の筋肉が衰えると、ものを飲み込む力が弱くなってしまい、内服薬は喉に詰まらせやすくなってしまいます。誤嚥(食べ物等が誤って気管に入ってしまうこと)を起こしやすくなるため、注意が必要です。
高齢者:医薬品使用の際の留意点
また、高齢者は持病を抱えていることが多く、一般用医薬品の使用は気を付けなければいけません。薬を服用することで持病が悪化したり、持病の治療のために服用していた医薬品との相互作用を起こす可能性があります。
高齢者に一般用医薬品を販売する際には、普段服用している薬はないか、特に注意して聞き取りを行うべきと言えます。
高齢者は医薬品の説明を理解するのにも時間を要する傾向もあります。細かい文字が見えづらい、添付文書や製品表示の記載の読み取りが難しい場合も多いため、きちんと理解して医薬品を使用できているのか、周りの人が配慮してあげることも必要です。
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