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小児・成人・高齢者の薬物吸収・分布・代謝・排出の違いとは?
まずADMEとは?
ADMEとは、体内に薬が投与されたあと、吸収されて血液中に入り、身体全体(一部)に分布し、肝臓で代謝され、尿中(糞便中)に排出される過程のことを言います。
吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)のそれぞれの頭文字をとってADMEと略して呼ばれます。
小児のADME
A(吸収)
新生児は成人と比べると胃のpHが高く(胃酸の量が少ない為)、成人よりも塩基性に偏っています。このことから、1 歳程度になるまでは酸性の薬は吸収が遅くなってしまい、塩基性の薬は吸収が早くなってしまいます。
また貼り薬の場合は、小児は成人に比べて皮膚が弱く柔らかいため、成人よりも薬の成分が多く吸収されてしまいます。
D(分布)
小児は成人に比べて肌に張りがあって柔らかく、(血液以外の部分の)水分量の割合が高くなっています。すなわち、水溶性の薬は血液中の薬物濃度が下がりやすくなり、投与量を増やす必要があります。
逆に、成長するにつれて水分量の割合は減少するため、副作用を避けるために投与量を減らす必要があります。
M(代謝)
代謝とは、薬の効果を無くす形(だいたいは水に溶けやすい形)にして、排泄をしやすくすることです。代謝のやり方の1つとして、水に溶けやすいようにするグルクロン酸抱合というものがあります。
しかしこのグルクロン酸抱合は生後約 100 日までは行うことができません。そのため、グルクロン酸抱合によって代謝される薬は、代謝することができず小児の身体の中に長くとどまってしまいます。
小児が飲んで安全と言われているアセトアミノフェンですが、この薬は硫酸抱合という形で代謝されます。小児は成人に比べてこの硫酸抱合を行う力が強いため、代謝されやすく副作用も出にくいと考えられよく使用されます。
E(排泄)
新生児の腎臓の機能は、成人の約1/5程度であり、約2歳で成人と同等になります。そのため、約2歳までは上手に排泄できず、薬が体内に長く留まってしまい副作用が起こる可能性が高くなってしまいます。
このように、すべてのADMEを考えると小児が薬を飲むうえでの判断はかなり難しく、実際病院で処方される薬の量は、経験上から安全と考えられる量を先生の判断で処方することも多くあるようです。
市販の小児用薬剤は処方薬に比べて成分量も少ないことが多いですが、売って良いのかわからない時は無理に販売するのではなく、薬剤師や医師に相談してみたり、受診を促したりすることも登録販売者にとって大切な判断の一つです。
高齢者ADME
A(吸収)
歳を取ると、胃の中のpHが上がったり、胃の中のものが排出される速度が遅くなったりします。胃内pHが上がると,カルシウムの吸収が悪くなるため,便秘のリスクが高まります。
また、腸溶性製剤(胃ではなく腸で溶ける設計になっている薬)は胃で溶けないよう酸性では溶けないようになっていますが、胃の中が酸性でなくなってきてしまうと設計より早く溶けてしまう可能性が出てきます。
そうするとその腸溶性製剤の副作用が出てしまったり、効果がきちんと現れなくなってしまう可能性があります。
胃酸の分泌を抑える薬を販売する際も本来はこのようなことまで考え、販売する必要があります。現在は第一類医薬品でもそのうち登録販売者でも販売ができる第二類医薬品になる可能性もあるため、頭の片隅に入れておくと良いと思います。
D(分布)
歳を取ると一般的に、体脂肪は増加し体内の水分量は減少します。脂肪が増加すると,親油性薬物(油とくっつきやすい薬)は体内で分布されやすくなり、体内により留まってしまいます。そのため、副作用が起こってしまう可能性が出てきます。
M(代謝)
肝臓での代謝においても,加齢とともに低下します。代謝にかかる時間が長くなるとその分、薬が作用している形のまま体内に長く留まってしまうため、副作用が出る可能性が出てきます。
しかし、この代謝においては個人差もあるため年齢だけで判断するのではなく個々に調節する必要もあります。
E(排泄)
加齢によって最も重要なのが、この排泄です。排泄は腎臓から行われることが多いですが、歳を取るとこの腎排泄が低下してしまいます。
また、この腎臓での排泄に関しても個人差があるため、血液検査などで確認をする必要があります。
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