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知っておきたい薬剤知識 ~骨粗しょう症治療薬~
骨粗しょう症治療薬の分類
骨粗しょう症は骨密度が低下して骨がスカスカになり、骨折しやすい状態を指します。
その治療の中心は薬物治療です。骨粗しょう症治療薬は大きく3つに分類することができます。(古くなった骨が破骨細胞の働きによって破壊されることを「骨吸収」、破壊された部分に骨芽細胞が働いて新しい骨を作ることを「骨形成」と言います。)
- 骨吸収を抑制する薬
- 骨形成を促進する薬
- 骨を作る材料を補充するする薬
これらの治療薬について、以下説明していきます。
骨吸収を抑制:ビスホスホネート製剤
骨吸収に関与する破骨細胞の働きを抑制して、骨吸収を抑制します。
骨吸収をゆるやかにすることで骨形成のスピードが骨吸収のスピードを上回り、結果的に骨密度の高い骨を形成していくことが期待できます。現在、骨粗しょう症治療における第一選択薬です。
主な製品名(一般名)
フォサマック・ボナロン(アレンドロン酸)、アクトネル・ベネット(リセドロン酸)、ボノテオ・リカルボン(ミノドロン酸)など
知っておきたいポイント
ビスホスホネート製剤は服用方法に特徴があります。
ビスホスホネート製剤は食事中のミネラル分の影響が大きく、薬の吸収が悪くなるため、起床してすぐ空腹状態での服用が決められています。
同じ理由から、必ずコップ一杯程度の十分量の水道水(硬水はダメ)か白湯で服用しなければいけません。
また、服用後30~60分間は横にならないようにしましょう。横になると胃からの逆流が起こりやすくなり、ビスホスホネート製剤の成分で食道に刺激を与える可能性が高くなります。
骨吸収を抑制:SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは骨吸収を抑制しています。
このSERMは閉経後骨粗しょう症の治療に多く用いられており、分泌量が格段に減ったエストロゲンの代わりにエストロゲンと同様の働きをして、骨吸収を抑制します。
主な製品名(一般名)
エビスタ(ラロキシフェン)、ビビアント(バゼドキシフェン)
知っておきたいポイント
エストロゲンは血液を固めやすくする作用もあります。SERMも同様の作用を示すため、ごくまれではありますが血栓形成の副作用(静脈血栓塞栓症)が報告されています。
骨吸収を抑制:カルシトニン製剤
カルシトニンは体内で働くホルモンの一種です。
カルシトニンは血中カルシウム濃度が上がると甲状腺から分泌され、破骨細胞の働きを抑制することにより骨吸収を抑制しています。カルシトニン製剤も同様の機序で骨吸収の抑制効果を期待している薬です。
主な製品名(一般名)
エルシトニン(エルカトニン)など
知っておきたいポイント
実はカルシトニンは骨吸収抑制作用と共に強い鎮痛作用も認められています。
カルシトニンの骨吸収抑制作用は他の薬と比較すると弱いとも言われており、骨粗しょう症治療においては骨折等による疼痛緩和を主目的として投与されることが多いです。
骨形成を促進:副甲状腺ホルモン製剤
副甲状腺ホルモン自体は骨吸収を促進する働きがあります。
骨吸収が促進されて血中カルシウム濃度が上昇すると、反射的に骨形成が促進されるといった調節機構が働いているのですが、この副甲状腺ホルモン製剤はその調節機構を上手く利用した薬です。
副甲状腺ホルモン製剤をあえて間欠的に投与することで、反射的な骨形成促進を上手く促すことを期待しています。
主な製品名(一般名)
フォルテオ・テリボン(テリパラチド)
知っておきたいポイント
現在使用されている副甲状腺ホルモン製剤は全て注射剤です。毎日注射が必要な製品もあれば、1週間に1回のみでよい製品もあり、薬効機序の特性を考慮して投与間隔が定められています。
骨を作る材料を補充:ビタミンK製剤
ビタミンKは脂溶性ビタミンの一つで、骨代謝や血液を固める体内の働き(血液凝固)などに関与しています。骨代謝において、ビタミンKは骨形成の促進、骨吸収の抑制作用を示します。
主な製品名(一般名)
グラケー(メナテトレノン)など
知っておきたいポイント
骨粗しょう症に対して即効性があるものとは言えませんが、骨折に対する予防効果が認められています。
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