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知っておきたい疾患知識 ~糖尿病編~

あなたの周りに糖尿病を患っている方はいらっしゃいますか? 糖尿病という名前は知っていても、その病態や合併症、治療法は意外と知らないことが多いのではないでしょうか。日本において糖尿病有病者と糖尿病予備群は合わせて約2,000万人にものぼり、国も糖尿病を重要疾患の一つとして位置づけています。そんな糖尿病について、理解しておきたいポイントを絞って解説していきます。

糖尿病とは?

糖尿病というのは、血糖値が高い状態が続いてしまっている状態を指します。

人の体は食事を摂ると一時的に血糖値が高くなるものですが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンによって、時間の経過とともに血糖値は正常に戻るようになっています。

インスリンの分泌量が少なかったり、インスリン自体の働きが弱くなると血糖値を十分に下げることができず、血糖値が高い状態が続いてしまうのです。

血液検査で血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)を測定すると、血糖値の状態がわかります。

  • 空腹時血糖値(10時間以上絶食後、早朝空腹時の血糖値)126mg/dL以上
  • HbA1c 6.5%以上

一般的に、上記に該当するような場合は糖尿病として治療が始まります。

血糖値の調節機構

そもそも糖(グルコース)は体にとって重要なエネルギー源であり、普段の食事から摂取しています。食事だけでは糖が不足する状態では、肝臓に貯蔵していた糖を使って体を動かし続けます。

血中に糖が十分にある状態においては糖が体中の細胞に取り込まれ、エネルギー源として使用されます。このように糖を細胞に取り込むには、インスリンの働きが必要不可欠なのです。

それでもまだ糖が血中に残っている場合は、インスリンの働きによって肝臓や筋肉、また脂肪細胞で糖を蓄積します。

このように、インスリンは体内で唯一血糖値を下げることができるホルモンであり、インスリンが働かないと糖をエネルギー源として使用することもできないのです。

糖尿病のタイプ

糖尿病はその原因によって以下のように分類されます。

1型糖尿病

自己免疫異常やウイルス感染などにより、インスリンを分泌している膵臓β細胞が壊されてしまった結果、インスリン分泌ができなくなったことにより発症する糖尿病です。

膵臓からのインスリン分泌がほとんど機能していないため、インスリン投与が必須となります。

2型糖尿病

日本人の糖尿病の90%以上が該当します。運動不足や食生活の偏りなどの生活習慣病により発症する糖尿病です。

妊娠糖尿病

妊娠してから初めて始まった血糖値異常です。そもそも妊娠中はインスリンの効果が弱くなることが知られており、血糖が上がりやすい状態です。

母親が高血糖になると、お腹の中の胎児も高血糖状態になり、さまざまな合併症を引き起こしやすくなります。

その他

遺伝子異常や他の疾患から続発した糖尿病です。特に血糖を上げる作用に影響するホルモン(成長ホルモン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど)に関連する疾患では、高血糖を招きやすいと言われています。

糖尿病が引き起こす三大合併症

どのタイプの糖尿病であっても、高血糖状態では血液の粘性が高まり、ドロドロ状態となります。糖分が血管を構成している血管壁と結合してしまい、血管を硬くするのです。

その結果、血管の弾性が失われ、血管が脆く傷つきやすい状態となってしまいます。全身に張り巡らされている血管と神経が少しずつ侵され、栄養を届けることができなくなり、様々な合併症を引き起こします。

糖尿病性腎症

腎臓にある糸球体は毛細血管の集合体のようなものです。高血糖の状態が続くことで、糸球体の毛細血管が破れたり詰まったりしてしまい、老廃物をきちんとろ過することができなくなります。

腎症を発症しても初期は自覚症状がなく、尿検査によって判明することがほとんどです。

糖尿病性網膜症

高血糖により、眼の網膜にある血管に障害が起こった状態です。無症状で進行することも多く、最悪の場合は失明にも至ることがあります。糖尿病患者の10人に1人が網膜症を発症していると言われています。

糖尿病性神経障害

高血糖により全身の毛細血管に障害が起こることにより、神経細胞に必要な酸素や栄養素が不足するため、神経障害が起こります。

主に足の裏や指から痛みやしびれを自覚する場合が多く、進行すると手指でも同様の痛みやしびれを感じます。

神経障害が進行すると、痛みやしびれ自体を感じることができなくなり(感覚が麻痺してしまい)、足に傷を受けても気が付かずにそのまま細菌感染を起こして壊死してしまうことも少なくありません。

糖尿病治療のポイント

糖尿病の治療は血糖コントロールが基本です。先に述べたような重大な合併症の発症を起こさないこと、また既に合併症を持つ方はそれ以上の悪化を防ぐことが大切です。

血糖コントロールに重要なのが食事と運動。食事によって糖が体内に取り込まれますので、適度な糖分、その他の栄養素をバランス良く摂取することが重要です。

糖尿病だからといって食べてはいけないものはありませんが、どんなものでも「適量」を心がけましょう。

また、運動することは体内で糖を消費することに繋がります。運動して筋肉が発達すると糖の消費もより効率的になりますし、脂肪が減ることでインスリンが効果を発揮しやすい状態にもなります。

食事や運動でも血糖コントロールがうまくいかない場合は、薬物療法を行います。

糖尿病といっても、様々な分類があることまで知っている方はどれぐらいでしょうか。登録販売者も医療従事者の一人として、疾患知識は知っていて損はないはずです。いきなりすべてを覚えるのは難しいかもしれませんが、少しずつ理解していきましょう。学ぶことを継続すれば、一皮剥けた登録販売者になれるはずです!

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