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登録販売者、採用の現場から

殺菌・消毒・滅菌・除菌・抗菌・・・製品に表示される言葉、何が違う?

新型コロナウイルスの流行で、除菌や消毒グッズの需要が増えました。殺菌・消毒・滅菌・除菌・抗菌といった言葉にお客様も敏感になっている一方で、どれも同じような意味で捉えられている場合も考えられます。製品に表示されている、これらの言葉がどのような意味をもつのか理解して、登録販売者業務に活かしてください。

殺菌とは

簡潔に言うと、文字通り「菌を殺す」ことです。

登録販売者試験問題作成に関する手引きでは、「殺菌・消毒は生存する微生物の数を減らすために行われる処置」と記載されています。

ただし、その対象(どんな菌やウイルスに有効なのか)や程度(どのくらいの量を殺すことができるのか)については、定義されていません。

しかし、製品表示に関しては薬機法の規制を受け、品目毎に製造販売承認が必要な医薬品又は医薬部外品にしか「殺菌」という効果を謳えません。

消毒とは

消毒の定義

簡潔に言うと、文字通り「毒を消す」ことです。

第17改正日本薬局方では参考情報の『消毒法及び除染法』で「消毒:一般的には、病原菌など有害な微生物を除去、死滅、無害化することであり、本参考情報では対象物又は対象物の表面等の局所的な部位に生存する微生物を減少させることを指す。」と記載されています。

前述したように、登録販売者試験問題作成に関する手引きでは、「殺菌・消毒は生存する微生物の数を減らすために行われる処置」と記載され、殺菌消毒という1つの言葉として用いられることも多く、殺菌と消毒はほとんど同じような意味合いで使われることもあります。

しかし、消毒の手段は殺菌だけではないので、本来は意味合いの異なる言葉です。

消毒効果を謳った製品について

原則として、「消毒」という言葉も薬機法の規制を受け、医薬品又は医薬部外品にのみ使用されます。

しかし、新型コロナウイルス感染症に伴い、医薬品及び医薬部外品である手指消毒用のエタノールの需給が追いつかない状況を受け、時限的条件付きで医薬品や医薬部外品ではない高濃度エタノール製品を代替で用いられることが認められています。(2020年7月20日現在)

(1)医薬品または医薬部外品たる手指や皮膚への消毒液について

元々は医薬品のみでしたが、現在は「すり傷、きり傷、さし傷、靴ずれ、創傷面等の洗浄又は消毒を目的とする外用剤(外用液剤、軟膏剤)」は指定医薬部外品として承認されています。

このうち、需要が高まっている手指へのスプレー等で「消毒」効果を謳っているものは、主に「手指又は皮膚の洗浄・消毒」を目的とした製剤です。使用される有効成分や配合割合は基準により定められています。

新型コロナウイルスに有効とされるエタノールを有効成分とする製剤については、エタノールの配合範囲は「76.9%から81.4%(vol%)」と決められています。

(2)要注意! 医薬品または医薬部外品以外の高濃度エタノール製品

医薬品または医薬部外品ではない高濃度エタノール製品(現在、60vol%以上でよいとされています)を販売する事業者は、以下のような内容を製品の表示や広告等に記載して差し支え無いこととされています。

・製品は医薬品や医薬部外品ではありませんが、消毒用エタノールの代替品として、手指消毒に使用することが可能です。

あくまでも臨時的な措置であることに注意してください。

滅菌とは

簡潔に言うと「菌を全滅させる」ことです。

第17改正日本薬局方の通則で滅菌とは、「被滅菌物の中の全ての微生物を殺滅又は除去することをいう。」と記載されています。

滅菌については程度の定義があり、製剤通則の最終滅菌法で「10-6以下の無菌性保証水準を担保する条件において行う」とされています。

すなわち、滅菌とは微生物の生存する確率が100万分の1以下になることであり、国際基準も同様です。

「滅菌」も薬機法の規制を受ける言葉ですが、高圧蒸気を用いる等、特殊な操作をしないと実現不可能であり、そもそも人体に対して行う類のものではありません。

「滅菌ガーゼ」などの滅菌された製品が販売されています。

除菌とは

簡潔に言うと「菌を取り除く」ことです。

薬事の規定では、法的に定義されたものはありませんが、業界として基準を定めているものはあります。

例えば、洗剤・石けん公正取引協議会が定義する除菌とは、「物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を、有効数減少させること」で、除菌の用語を使用する際には、対象物・用途・使用条件を明記することとされています。

「除菌」は薬機法の規制を受ける言葉でなく、どの程度菌を減らしたら除菌と言えるかについても特段示されていません。水で手を洗って物質的に菌を流すことも除菌行為のひとつと言えます。

色々な製品で、除菌効果を謳っています。菌を除去する効果は高いけれど、医薬品や医薬部外品ではないために除菌という表現に留めているものもあるし、そうでないものもあると言えます。何を持って除菌作用があるとしているのかよく判断することが必要です。

抗菌とは

簡潔に言うと「菌の繁殖を防ぐ」ことです。

細菌を壊したり、生育を抑えたりする為に、細菌性感染症に使われる医薬品を抗菌薬と呼びますが、一般的に製品表示として「抗菌効果がある」といったような表現をしている場合には、菌の繁殖を抑えるものという意味合いで用いられます。

経済産業省の抗菌加工製品ガイドラインによると、抗菌加工製品における抗菌とは「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」とされています。

「抗菌」も薬機法の規制を受ける言葉ではないので、色々な製品で性能が謳われています。

手指や身の回り品を清潔にするためのグッズであふれかえる昨今、特に「除菌」「抗菌」などの言葉はよく目にします。効果の程度が定義されていないので、色々なものに効果を謳うことができるからです。「消毒」「殺菌」が表示された製品にも共通して言えることですが、目的にあった効果をどの程度持つものであるのか、成分表示等を見て検証してください。判断が難しい場合は、メーカーに問い合わせることも必要です。

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