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登録販売者、採用の現場から

一般用医薬品に用いられる貧血用医薬品について

自覚がない場合も多いですが、疲れやすさやだるさが続いている場合、貧血の可能性があります。血液の役割を簡単に見直しつつ、登録販売者としてアドバイスできる貧血の対策についてしっかりおさえておきましょう。

血液の役割について

血液には酸素や栄養分を全身の組織に供給し、二酸化炭素や老廃物を排泄器官へ運ぶ他、ホルモンの運搬によって体内各所の器官・組織相互の連絡を図る役割があります。

また、血液の循環によって、体内で発生した温熱が体表、肺、四肢の末端等に分配され、全身の温度をある程度均等に保つのに役立っています。

血液は血球と血漿からなり、血球は赤血球・白血球・血小板のことです。貧血と関連するのは赤血球で、赤血球は骨髄で産生される中央部が窪んだ円盤状の細胞で、血液全体の約40%を占め、ヘモグロビンという赤い血色素を含みます。

ヘモグロビンは鉄分と結合したタンパク質です。酸素量の多いところでは酸素分子と結合し、酸素が少なく二酸化炭素が多いところでは酸素分子を放出する性質があります。この性質によって、酸素の多い肺胞の毛細血管では酸素を受け取り、血流によって全身へ酸素が供給されます。

貧血について

赤血球の数が少なすぎたり、赤血球中のヘモグロビン量が欠乏したりすると、血液は酸素を十分に供給できません。それによって現れるのが、疲労、動悸き、息切れ、血色不良、頭痛、耳鳴り、めまい、微熱、皮膚や粘膜の蒼白、下半身のむくみ等といった貧血症状です。貧血はその原因から、ビタミン欠乏性貧血、鉄欠乏性貧血等に分類されます。

ビタミン欠乏性貧血は食事の偏りや胃腸障害等のため赤血球の産生に必要なビタミンが不足することによるもので、特に、ビタミンB12が不足して生じる貧血は悪性貧血と言います。

鉄欠乏性貧血は、月経過多や消化管出血等による血液損失等のためヘモグロビンの生合成に必要な鉄分が不足することによる貧血です。

鉄分は、赤血球が酸素を運搬する上で重要なヘモグロビンの産生に不可欠ですが、鉄分の摂取不足を生じても、体内の鉄分を使いきるには数カ月かかるため、鉄欠乏性貧血はゆっくりと進行するのが普通です。体内にはフェリチンと呼ばれる鉄を蓄積する貯蔵鉄の役割をもつタンパク質があります。

鉄不足の初期にはこの貯蔵鉄(肝臓などに蓄えられている鉄)や血清鉄(ヘモグロビンを産生するために、貯蔵鉄が赤血球へと運ばれている状態)が減少するのみでヘモグロビン量自体は変化せず、ただちに貧血の症状は現れません。

しかし、貯蔵された鉄分もなくなると、ヘモグロビンが減少して貧血症状が現れます。

鉄欠乏状態を生じる要因として、日常の食事からの鉄分の摂取不足及び鉄の消化管からの吸収障害による鉄の供給量の不足、消化管出血等があります。

また、体の成長が著しい年長乳児や幼児、月経血損失のある女性、鉄要求量の増加する妊婦・母乳を与える女性では、鉄欠乏状態を生じやすいです。

一般用医薬品で用いられる貧血用薬の配合成分

鉄分について

一般用医薬品として販売されている貧血用薬(鉄製剤)は、鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄分を補充し、造血機能の回復を図るためのものです。

不足した鉄分を補充することを目的として配合され、主な成分としては、フマル酸第一鉄、溶性ピロリン酸第二鉄、可溶性含糖酸化鉄、クエン酸鉄アンモニウムなどが用いられます。

なお、鉄製剤を服用すると便が黒くなることがあります。これは使用の中止を要する副作用等の異常ではありませんが、鉄製剤の服用前から便が黒い場合は消化管内で出血している場合もあるため、服用前の便の状況との対比が必要です。

鉄以外の金属とビタミン成分について

そのほか鉄以外の金属成分が配合される場合もあります。

銅はヘモグロビンの産生過程で、鉄の代謝や輸送に重要な役割を持ち、補充した鉄分を利用してヘモグロビンが産生されるのを助ける目的で、硫酸銅が配合されている場合があります。

コバルトは赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分です。骨髄での造血機能を高める目的で、硫酸コバルトが配合されている場合があります。

マンガンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝をする際に働く酵素の構成物質です。エネルギー合成を促進する目的で、硫酸マンガンが配合されている場合があります。

ビタミンが配合される場合もあります。ヘモグロビン産生に必要なビタミンB6、正常な赤血球の形成に働くビタミンB12や葉酸、消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的としてビタミンC(アスコルビン酸等)などが使用されます。

貧血用薬の副作用・相互作用

貧血用薬(鉄製剤)の主な副作用は、悪心、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹痛、便秘、下痢等の胃腸障害です。鉄分の吸収は空腹時のほうが高いですが、消化器系への副作用を軽減するには、食後に服用することが望ましく、胃への負担を軽減するため、腸溶性の製品もあります。

押さえるべき相互作用としてお茶等に含まれるタンニン酸との反応があります。緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿等のタンニン酸を含む飲食物を服用の前後30分に摂取すると、鉄の吸収が悪くなることがあるので、服用前後はそれらの摂取を控えましょう。

特段の基礎疾患等がなく、鉄欠乏の貧血が疑われる場合には、鉄分不足の食生活が原因として考えられので、食生活の改善を促すことも登録販売者としてとても大事です。食生活を改善し、鉄製剤の使用を2週間程度続けても症状の改善が見られない場合には、一般用医薬品による対処を漫然と継続することは適当ではないので、医療機関を受診するようお伝えしましょう。

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