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知っておきたい薬剤知識 ~糖尿病治療薬編~
糖尿病治療薬の作用による分類
糖尿病(以降、ここでは2型糖尿病のことを指します)は血糖値を下げるホルモン、インスリンの作用が大きく影響しています。
インスリンの分泌が不足していたり(インスリン分泌能低下)、インスリンは十分に分泌されていても体内で上手く効果を発揮できなかったり(インスリン抵抗性増大)することで高血糖状態が継続するのです。
そのため、糖尿病治療薬も以下の3つの観点から分類することができます。
- インスリン抵抗性改善を目的とする薬
- インスリン分泌を促進させる薬
- 体内における糖の吸収、排泄を調整する薬
多くの種類の糖尿病治療薬がありますが、その中から代表的なものをいくつか説明していきます。
インスリン抵抗性改善:ビグアナイド薬
もともと人の体では空腹時などの血糖値が下がった時は、肝臓に蓄えていた糖分を血中に放出してエネルギー源とする仕組みを持っています。
糖尿病患者では、その糖分の放出が過剰になっていることも判明しており、ビグアナイド薬はその肝臓からの糖分の放出を抑制することで、血糖値低下が期待されています。
主な製品名(一般名)
メトグルコ(メトホルミン)、ジベトス(ブホルミン)など
知っておきたいポイント
昔から使用されている糖尿病治療薬の一つで、最も有名な副作用として乳酸アシドーシスがあります。
発症頻度はまれですが、乳酸アシドーシスになると血液が酸性に傾き、食欲不振や吐き気、けいれんなどの症状を引き起こします。
メトホルミン自体が肝臓で代謝(解毒)される薬であるため、もともと肝機能が悪い方や高齢者では副作用を起こしやすいと言われています。
インスリン抵抗性改善:チアゾリジン薬
ビグアナイド薬と同様、インスリン抵抗性を改善させる薬です。血中の糖分はインスリンにより筋肉や肝臓に取り込まれますが、チアゾリジン薬はその糖分の取り込みを助けてあげる作用を持っています。
主な製品名(一般名)
アクトス(ピオグリタゾン)
知っておきたいポイント
特徴的な副作用は報告されていませんが、薬が効きすぎて低血糖状態になると、冷や汗や倦怠感、悪心などが急激に現れます。
インスリン分泌促進:SU(スルホニル尿素)薬
インスリンは膵臓から分泌されています。SU薬は膵臓にある細胞に作用することで、インスリン分泌を促進させ、血糖値を下げる作用が期待されています。
主な製品名(一般名)
グリミクロン(グリクラジド)、アマリール(グリメピリド)など
知っておきたいポイント
糖尿病治療薬の中でもSU薬は最も古くから使用されている薬ですが、直接膵臓に働きかけてインスリン分泌を促進させることから膵臓が疲弊してしまうといったデメリットも持ち合わせています。
また、空腹時でもインスリン分泌を促進させるため、他の糖尿病治療薬と比較しても低血糖症状が現れやすいと言われています。
糖の吸収・排泄調整:α-グルコシダーゼ阻害薬
消化管からの糖の吸収を遅らせることで、血糖値の上昇を抑える薬です。食事に含まれるでんぷんなどの炭水化物は、そのままの状態では消化管から吸収できません。
唾液や消化酵素によって、ブドウ糖に分解されて吸収されます。α-グルコシダーゼは、炭水化物の分解時に働く酵素の一つです。
主な製品名
グルコバイ(アカルボース)、セイブル(ミグリトール)、ベイスン(ボグリボース)
知っておきたいポイント
低血糖状態になるのを予防するため、必ず食事の直前に服用します。もし低血糖状態となった場合は、砂糖ではなく必ずブドウ糖を摂取しなければいけません。
砂糖を摂取しても、α-グルコシダーゼ阻害薬の作用によりブドウ糖に分解されないため、ブドウ糖を吸収することができないのです。
糖尿病患者での一般薬服用で注意しておきたいポイント
糖尿病を持つ方は、一般薬の服用でもいくつか気を付けておくべきことがあります。
例えば、総合感冒薬や解熱鎮痛薬などによく配合されているアスピリン。糖尿病治療薬を服用している方がアスピリンを服用すると、血糖値が下がりすぎてしまう可能性があります。
また、咳止め薬などによく配合されているメチルエフェドリンや麻黄は血糖値を上げる作用を持っています。そのため、そもそも糖尿病の方にとってあまり使用すべきでない薬とも言えます。
特に糖尿病治療薬の中でもα-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合は、健胃薬によく配合されている炭水化物消化酵素(ジアスターゼ)に注意しておきましょう。
α-グルコシダーゼ阻害薬の血糖値を下げる作用を打ち消しあって、α-グルコシダーゼ阻害薬の効果が弱まる可能性があります。
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