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風邪にまつわる意外なお話

「風邪を引いたみたいです。先生、抗生物質を出していただけませんか?」 このような患者さんが病院に多数来院されます。 しかし、抗生物質では風邪は治りません。ゆっくり静養したほうが早く治ると医学的にも証明されています。「風邪は薬で治すもの」と思っている方が多いようですが、薬で風邪を治すことはできません。

風邪薬で、風邪は治せない?

いわゆる「風邪に効く」と言われる薬は、次の4種類です。

  • 熱を下げ、咽喉・関節・筋肉の痛みをやわらげる解熱鎮痛薬(「アセトアミノフェン製剤」「イブプロフェン製剤」など)
  • せきを止め、たんを切る鎮咳去痰薬(「リン酸ジヒドロコデイン」「dl-塩酸メチルエフェドリン」など)
  • くしゃみ、鼻水を止める抗アレルギー薬(「マレイン酸クロルフェニラミン」など)
  • 総合感冒薬といわれる、1~3の成分をバランスよく配合したもの。

風邪薬は風邪の諸症状を緩和するだけで、根本的に治すものではありません。そもそも、インフルエンザ以外の風邪の原因のウイルスを殺す抗ウイルス薬は、いまのところ開発されていません。

それでも風邪薬に頼る方が多いのは、「一時的でも熱が下がり、せきが止まれば、体がラクになるから」でしょうが、それが逆に、風邪を長引かせています。

人の体は発熱などで、熱に弱いウイルスを効率よく撃退する防御システムを備えています。発熱は、体の免疫能を担う白血球が、体内に侵入した風邪ウイルスと必死に戦っている証拠です。人間の免疫力は、体温が一度上がれば約5倍に高まり、一度下がればおよそ30%低下すると言われています。

このため解熱鎮痛薬で無理に熱を下げると、ウイルスと闘う免疫力が低下して、ズルズルと風邪を長引かせ、こじらせてしまうのです。

ただし、体温が一度上がると内臓機能は10%近く低下するという説があります。もし39~40度に近いような発熱が一日以上続き、どうしてもつらい場合は、布で包んだ保冷剤などを首筋、脇の下、太ももの付け根など、太い血管が皮膚の浅いところを走る部位に当て、自然な解熱を試してください。

風邪に抗生物質は効果がない?

風邪症候群は、急性の「上気道炎症疾患」の総称です。成人は主としてライノウイルス、子どもはアデノウイルスやパラインフルエンザウイルスなどの感染を原因に発症します。まれに、細菌感染が原因の場合もありますが、ほとんどはウイルス感染と言っても間違いありません。

一般的な治療に用いられる抗生物質には、ウイルスを殺したり、力を弱めたりする力はありません。したがって、抗生物質では風邪の症状を改善・軽減できないばかりか、二次感染も予防できません。

ところが医師の多くは、患者さんの求めに応じて抗生物質を処方しているようです。少なくとも医師であるなら、抗生物質が風邪に効かないことを知らないはずはありません。

この背景には「風邪をこじらせて肺炎になる前に、抗生物質を処方して予防する」という考え方があります。しかし、抗生物質の予防的内服で、その後の肺炎を防ぐことはできません。

薬を欲しがる患者さんが余りにも多く、それをむげに断れば、「あそこは、薬も出してくれない」と患者さんの間によからぬ風評が立ちかねないといった事情があることも否めないでしょう。 このような情報を患者さんに伝えるのは医師の大切な役割のひとつですが、セルフメディケーションの考え方が広がりつつある現在、患者さんご自身も、身近な病気や薬の効果をよく理解することが大切ではないでしょうか。

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