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知っておきたい薬剤知識 ~関節リウマチの治療薬~
関節リウマチの治療
関節リウマチの治療は薬物療法が中心です。治療に用いられる薬は以下のものがあります。
- 非生物学的DMARDs(免疫調整薬)
- 非生物学的DMARDs(免疫抑制薬)
- 生物学的DMARDs(抗リウマチ生物学的製剤)
- NSAIDs
- ステロイド剤
関節リウマチの治療薬はDMARDs(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs)と呼ばれる疾患修飾性抗リウマチ薬が主役です。
関節リウマチの症状は発症後すぐが最も急激に進行することが明らかになっています。
そのため、発症後の早期からDMARDsを積極的に使用して関節炎の進行を抑え、その後は症状の改善にあわせながら薬の量を減らしたり、副作用の少ない薬に変更する「ステップダウンブリッジ方式」がスタンダードな考え方となっています。
関節リウマチの治療薬:非生物学的DMARDs(免疫調整薬)
アザルフィジン(サラゾスルファピリジン)、メタルカプターゼ(ペニシラミン)、リマチル(ブシラミン)、ケアラム(イグラチモド)、シオゾール(金チオリンゴサ酸ナトリウム)など
正常な免疫に影響を与えず、異常な免疫機能だけを是正するように働きかける薬です。
異常な免疫反応を調節し炎症を引き起こす要因となる体内物質などの産生を抑えます。薬の投与開始から効果があらわれるまで数週間〜数ヶ月かかったり、長期投与で効果の減弱が生じる場合もある場合もあります。
また、DMARDsそのものは痛みを抑制する効果はないので、NSAIDsとの併用が一般的です。
関節リウマチの治療薬:非生物学的DMARDs(免疫抑制薬)
プログラフ(タクロリムス)、リウマトレックス(メトトレキサート)、ブレディニン(ミゾリビン)、アラバ(レフルノミド)など
同じ非生物学的DMARDsの中でも免疫調整薬とは異なり、免疫抑制薬は免疫機能を非特異的に抑制します。
免疫反応を抑制し、リンパ球の異常増殖や炎症に関与する細胞の働きなどを抑えることで、炎症反応に関わる物質の過剰産生を抑えて抗リウマチ作用を示します。
これらの薬は関節リウマチだけに用いられるわけではありません。プログラフなどのように関節リウマチ以外の自己免疫疾患の治療や臓器移植後の拒絶反応を抑える目的で使われる薬剤もあります。
免疫抑制薬の中でもメトトレキサートは、欧米では関節リウマチ治療には第一選択薬として積極的に用いられています(日本では、他の一種類以上のDMARDsが無効になった場合に適応となります)。
関節リウマチの治療薬:生物学的DMARDs(抗リウマチ生物学的製剤)
レミケード(インフリキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)、シンポニー(ゴリムマブ)、シムジア(セルトリズマブ)、アクテムラ(トシリズマブ)など
関節リウマチに関与する炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)の働きを阻害して関節の腫れや痛みなどを改善し、骨などの損傷を防ぐ薬です。
関節リウマチでは異常な免疫反応により炎症性サイトカインという物質が過剰に産生されており、これが炎症反応を引き起こす要因となります。
例えば炎症性サイトカインの一つ、TNF-α(Tumor Necrosis Factor‐α:腫瘍壊死因子α)は腫瘍細胞の壊死を誘導する因子として発見され、その後の研究で炎症の悪化や組織の障害などの因子であることが解明されました。
炎症の場で中心的に働く物質ということです。レミケードやエンブレル、ヒュミラなどはTNF-αに特異的に結合して炎症反応を抑える作用、TNF-αを産生する細胞に対する阻害作用を示します。
生物学的DMARDs(抗リウマチ生物学的製剤)の特徴
生物学的DMARDsは、関節リウマチに対して優れた効果を示す一方、重篤な副作用をきたす場合があります。
免疫の働きを抑える薬であるため、注意をしないと肺炎や結核などの感染症を起こすこともあり、重症化すると敗血症も起こすことがあります。
また、薬価も高いものが多かったり、長期服用による安全性について不明確なものがあったりするため、生物学的DMARDsの使用にあたっては専門医の判断が重要です。
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