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知っておきたい薬剤知識 ~脳血管障害の治療薬~
脳卒中の治療
脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることで脳の神経細胞に障害が起こる疾患です。
血管が破れるタイプとして脳出血、くも膜下出血があり、血管が詰まるタイプは心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞(3つを総称して脳梗塞)があります。
脳卒中の治療はその発症から8時間までを目安と考える「急性期」、その後リハビリテーション等を行う「回復期」、再発予防が中心となる「慢性期」のそれぞれに合わせた内容が実施されます。
また、脳卒中のタイプによっても治療法が異なります。
血管が破れる脳出血、くも膜下出血の場合は、外科的手術で脳内の血種を取り出したり、血管が詰まる脳梗塞の場合はカテーテルを通して直接血栓を取り出す血管内治療を行ったりすることもあります。
いずれの場合も脳がダメージを受けて腫れてしまい、症状悪化につながることもあります。このような場合には脳の腫れを抑える抗浮腫薬(マンニトールなど)、脳保護薬(エダラボンなど)を使用することがあります。
今回は、脳卒中の薬物治療の中心となる血液(血栓)に関連する薬をいくつか解説します。
脳卒中の治療薬:血栓溶解薬
主な製品名(一般名)
アクチバシン・グルトパ(アルテプラーゼ:t-PA)、ウロナーゼ(ウロキナーゼ)など
主に脳梗塞の急性期に用いる薬です。
脳の血管にある血栓を溶かし、血流を再開させます。特にt-PA製剤と呼ばれるものは、原則脳梗塞の発症から4.5時間以内の使用が適応となっています。
これは、血栓を溶かす作用によって脳や消化管内に出血を起こすリスクが高いためです。
そもそも血栓が詰まっている脳血管はそのダメージにより血管が破れるリスクも高くなっており、安易に血栓を溶かすと併せて脳血管が破れて脳出血も引き起こす可能性があるのです。
このようにリスクを考慮した結果、4.5時間以内の使用ということが定められました。
脳卒中の治療薬:抗凝固薬
主な製品名(一般名)
ワーファリン(ワルファリン)、プラザキサ(ダビガトラン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、エリキュース(アピキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)など
主に心原性脳塞栓症の回復期の治療に用います。
血液凝固因子の働きを抑制して、血液を固まりにくくする薬です。主に静脈にできる血栓に効果が認められるため、脳の動脈で血栓が作られることの多いアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞ではあまり使用されません。
特にワーファリンを服用している場合は、食生活でも気をつけなければいけないことがあります。
それは一部の食品の摂取制限と他の薬やサプリメントの飲み合わせです。
ワーファリンは血液を固まらせるビタミンKの働きを抑えています。納豆やクロレラ、青汁などは体内でビタミンKの合成を促進したり、そもそもビタミンKを多く含んでいるため、ワーファリンの効果を弱めてしまうのです。
絶対に食べてはいけないというわけではなく、小鉢程度の量であれば問題ないとも言われています。
また、サプリメントの成分にクロレラが含まれていたり、ワーファリンの作用を低下させるセントジョーンズワートが含まれていることもあります。ワーファリン服用患者の場合、サプリメントの成分にも気をつけなければいけません。
脳卒中の治療薬:抗血小板薬
主な製品名(一般名)
プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、バイアスピリン(アスピリン)、アンプラーグ(サルポグレラート)、パナルジン・マイトジン(チクロピジン)、プレタール(シロスタゾール)など
主にアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の回復期の治療に用います。
血液凝固に関わる血小板の活性化を抑制して、血液を固まりにくくする薬です。抗凝固薬とは逆に主に動脈でできる血栓に使用されます。
アスピリンは解熱・鎮痛作用をもつ薬と認識している方がほとんどかもしれません。
アスピリンは500~1000mg/日の高用量で服用すると解熱・鎮痛作用を示す一方、50~150mg/日の低用量で服用すると抗凝固作用がメインとなります。
そのため、病院では血管イベント(急性冠症候群や脳梗塞など)予防目的で、低用量で投与されています。
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