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取り扱い要注意?! 少し特殊な一般薬 ~過敏性腸症候群(IBS)に効く薬~
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)とは、潰瘍や炎症といった目に見えてわかる器質的疾患が腸にはないにも関わらず、慢性的に腹痛や便秘、下痢などの便通異常を数ヶ月にわたって繰り返す疾患です。
大腸を中心とする腸の機能異常が原因であると言われています。
過敏性腸症候群の診断基準は以下のようになっています。
最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、下記の2項目以上の特徴を示す
- 排便によって症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
過敏性腸症候群の患者数は推定で10人に1人と言われており、男女ともに10~20歳代の比較的若年者に多いと言われています。
過敏性腸症候群の原因
この疾患の原因は残念ながらまだ明らかになっていません。しかし、症状が現れるときは何らかのストレスを感じている状態であることが多いこと、不安感や抑うつ感などの精神症状も示す人がいることから、心理的要因も影響しているのではないかと考えられています。
緊張状態、不安状態が続くと、胃腸の収縮運動が激しくなったり、痛みを感じやすくなってしまうようです。
このように原因が明らかではないため、過敏性腸症候群を根本的に治療する方法は見つかっていません。ストレスを避けて十分な睡眠を取り、規則正しい生活を送ることが基本となります。
食習慣、生活習慣の改善だけでは症状に変化が見られない場合に薬物治療も行います。下痢や便秘、腹痛といったそれぞれの症状を緩和させるための止瀉薬、便秘薬(下剤)、抗コリン薬などが用いられます。
精神症状が強くでている方には抗不安薬などを用いることもあり、患者さんそれぞれに適した薬を組み合わせて服用します。
過敏性腸症候群に用いる一般薬
過敏性腸症候群の診断はもちろん医療機関で医師の診察を受けて行われます。
薬物治療や生活習慣の改善によって過敏性腸症候群の症状が落ち着き、治療終了との判断がなされていても、再発しやすいのも特徴です。
過敏性腸症候群が再発した場合、その治療薬は一般医薬品として薬局、ドラッグストアでの取り扱いがあることをご存知でしょうか。
再発過敏性腸症候群に用いるトリメブチンマレイン酸塩
再発過敏性腸症候群に適応がある一般薬は、トリメブチン(一般名)があります。トリメブチンは腸管のオピオイド受容体という部分に結合して、消化管運動亢進時には消化管運動を抑制し、消化管運動低下時には消化管運動を促進する消化管運動調律作用薬です。
過敏性腸症候群は、患者によって下痢症状がメインのタイプ、腹痛症状がメインのタイプ等の違いがありますが、このトリメブチンはどのタイプの過敏性腸症候群であっても有効であると言われています。
トリメブチンマレイン酸塩購入時の特徴
この薬は、薬局、ドラッグストアに行けば誰でも購入できるわけではありません。あくまでも、以前に医師より過敏性腸症候群の診断を受けたことのある人しか購入できません。
腹痛や下痢、便秘が続くといった症状には、検査をしてみてはじめてわかる腸の疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)が隠れている可能性があるからです。
購入希望のお客様が別の疾患ではなく、過敏性腸症候群だと診断されていることを確認するため、登録販売者としてもきちんとヒアリングをしなければいけません。
お客様自身の自己判断で「過敏性腸症候群かもしれないから薬を使用したい」と言われることがもしあれば、毅然とした態度で販売できない旨、また下痢や腹痛などの症状があってもきちんと検査をしてみないと、潰瘍性大腸炎やクローン病といった重大な疾患が隠れている可能性があることなどをきちんと伝えるようにしましょう。
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